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平成28年度診療報酬改定の情報

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次回の診療報酬改定について情報が徐々に公開されていますが、本日1月20日の中央社会保険医療審議会の内容が一部公開されていました。

http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12404000-Hokenkyoku-Iryouka/0000109793.pdf

今回は全体では本体部分が0.49%アップとされていますが、薬価の引き下げ幅が大きく実質マイナス改定と言われています。
微生物検査の動向はどうでしょう?

前回はグラム染色が上がりました、血液培養の2セット採取が請求できるようになり、結核菌液体培養も医療技術としての評価も高く上がりました。

今回、グラム染色については再評価できる医学的な有用性が示されていないということで今回の改定では評価を行わないと回答が出ていました。実質保険点数のアップは無いということです。残念ですが、過去25点まで下がった時に比べると未だ良い方です。もう少し根付いてくれることを期待しましょう。

じゃ、高い評価を得ているのは何かあるでしょうか?優先度の高いと考えられる微生物検査は以下のようです。

・呼吸器材料を除く細菌培養・同定検査
・抗酸菌液体培地法(前回に続いてです)

これだけでも結構な増収が見込めそうですね。

また、本年度から始まった検体採取ですが、鼻腔・咽頭拭い液の採取が保険収載されそうです。これで臨床検査技師が採取をすると自ら保険算定できることになりそうですね。
また、耐性菌のスクリーニング(MBLとESBL)、耐性遺伝子検査について保険収載できないものか答申が行われていたようですが、評価対象から外れました。遺伝子による微生物同定も評価対象から外れてしまいましたが、やっていることは正しいと思いますので、継続して検査は続けていきたいと思います。そして皆さんと評価して貰えるような内容を提示していき、患者さんへのフィードバックをしっかりしていく使命があると思いますので、皆様頑張りましょう。

グラム染色の点数がアップしないですが、これは先日FBに掲載したものです。
菌の情報以外でも色々と病態把握できる情報は多くあります。多核的に観察していきましょう。

グラム染色を通して症例を斜め読みしていると感染症以外の疾患が分かることがあります。

下記の写真はコレステリンクラフトと言うもので、血管破錠に伴う出血が原因でコレステリン結晶が析出し、染色をすると結晶成分が抜けて見える現象です。このスライドで悪性腫瘍との関連性について指摘することができました。

主に腫瘍に伴い集積した組織球や細胞融解に伴って析出した脂質成分の過剰な蓄積が伴うことで確認されることがあります。

感染症の場合も組織球が多量に集積するような疾患ではこの現象が見られるようです。そのため組織由来の体液などでこの像が見られると腫瘍性病変を鑑別にあげる必要があります。

http://blog.livedoor.jp/garjyusaiga/archives/52267341.html

血管に蓄積するとコレステリン塞栓症を起こすことで有名ですよね。

こういった像は、我々に何らか情報をもたらしてくれますので大事にしていきたいと思います。


2_2その1

Photo_2その2

明日から臨床微生物学会です ~8地区競演のワークショップ~

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明日から第27回日本臨床微生物学会総会・学術集会が仙台で開催されます。

http://www.congre.co.jp/jscm2016/

今回は全国の8地区が競演する形でワークショップが学会の中で開催されます。

学会HPや学会誌には未だ掲載はありません(当日何か案内があります)が、各地区特色のあるものが報告されます。

1.北海道地区

血液培養検査!一緒に考えれば,なまら いいっしょ! ―診断的価値を高める,採取から検査・報告まで―

2.東北地区
真菌症診断に貢献する真菌検査の技術習得―よく見ると,とても美しいカビたち―

3.関東甲信越地区
まれな菌?! いざという時困らないために 2016

4.中部地区
迷えるあなたの道標 ~欠如しがちな「躾」「教育」「評価」を考える~

5.近畿地区
院中八策 ~よりよい微生物検査の報告を目指して~

6.中国地区
第 1 回「まれ菌倶楽部」

7.四国地区
四国お遍路 稀な感染症例ツアー―日常検査で見逃さないために―

8.九州沖縄地区
九州,沖縄地区における「壊死性筋膜炎」の病態解析

我々近畿地区からは”結果報告”にコミッた内容を紹介します。

名付けて「院中八策~よりよい微生物検査の報告を目指して~」

本ワークショップに関する口演は1/30の11:00から第9会場で行い、ワークショップは展示会場で行う予定です(近畿地区はクロークの前)。

また、1/30(土)には短時間ですが各報告者による解説をワークショップ会場で行う予定にしております。伝えきれないこともありますので、是非ワークショップ会場にお立ち寄り頂き内容を確認して頂ければ幸いです。

あと、個人的にはMotivational session1にて

1 月 30 日(土) 15:30~17:00 第 4 会場(仙台国際センター会議棟 2 階 桜 1)

主治医を感激させた微生物検査―検査技師の知識・経験と第六感―

について取り上げます。
素晴らしい症例を2例ご紹介しますので、皆さんも一緒に考えてください。

皆様、宜しくお願いします。

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CLSI太っ腹

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薬剤感受性検査は菌種と薬剤の組み合わせで異なります。

つまり同じ抗生剤でも菌種が変われば判定基準も大きく変わることがあります。これは耐性機序の問題、病原性の高低にも大きく関わってきます。
感受性とは通常の投与量で治療が成功するという意味で”S”と付いています。
良くSensitiveという方もいらっしゃいますが、正しくはSusceptibileのSです。

日本で使われているものはCLSIのドキュメントですが、今まで有償だったのですが、なんと無償で閲覧が可能になっていると情報を頂きました。太っ腹ですね。


今までEUCASTが無償でしたのでこちらを先にみておりましたが。これからは自由に比較できるようになり嬉しいですね。

EUCAST2016ドキュメント


英語が苦手な方もいるでしょうが無料ですので頑張って読んで臨床に活かしてください。

簡単なダイジェストは日本臨床微生物学会のHPに記載されています。併せて参考にしてください。 http://www.jscm.org/kokusai/2016_clsi.html

下記は先日行われたグラム染色カンファレンス in 仙台の模様です。
総勢85名の方に参加して頂きました。(詳細はまた報告予定です)
優勝はK大学病院のO先生でした。おめでとうございます。
来年は長崎で行う予定です。宜しくお願いします。

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Carbapenem Inactivation Method (CIM)をしてみた件

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先日の臨床微生物学会総会でもありましたが、カルバペネマーゼの新らしい検査として「Carbapenem Inactivation Method (CIM)」というものが紹介されていました。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4370852/pdf/pone.0123690.pdf

日本語で言えば「カルバペネム不活化法」とでも言うのでしょうか。
Carbapenem Inactivation Method (CIM)について少し気になったので手持ちの株で実際に検査を実施してみました。原文を参考にしましたが間違っていたらすいません(ご指摘ください)。

1.前培養

1)被検菌の準備
被検菌を血液寒天培地かミューラーヒントン培地(MHA)で一昼夜培養をします。

たぶん、選択性の強い培地だと培地成分の混入により正しくでない可能性があるからでしょうか?CarbaNPの場合はpHに影響が出てくるのでダメなのは知っていますが。一先ず選択性の弱い培地で前培養をするようです。

2)インジケーター株の準備
インジケーター株として改良ホッジ試験でも用いたE. coli(ATCC 25922)を血液寒天培地かミューラーヒントン培地(MHA)で一昼夜培養をします。

この株はABPCのみ耐性株なので、どうしても無い場合は同様の感受性をしめした臨床分離株を準備することで代用可能かもしれない(これはその場しのぎなのでお勧めはしません)。ATCC 25922は内部精度管理株ですので皆さん準備はしておきましょうね。

2.前処理

1)マイクロチューブに400μLの滅菌水を準備し、10μLの白金耳で1白金耳菌を搔き取り均等に混和する。

2)MEPMが10μg含有されたディスク(ここではOxoidだけど同じ規格であれば良いんだと思う)を1)で作成した菌液に浸し、35℃で2時間培養を行う。

3)インジケータ株(E. coli ATCC 25922)をMcFarland濃度0.5に調整してMHAに撒く(通常の感受性検査のように綿棒で3方向に塗布する)。

4)3)で準備したインジケータ株塗布済みMHAに2)で処理済みのMEPMディスクを取り出し培地の上に置く(白金耳で掴めとあるが難しいです)。

5)再度一昼夜培養して判定を行う
(通常は6時間培養ですが、MEPMの予備培養と加えると8時間かかります。通常、ルチンであれば昼前に同定・感受性判定があるので業務時間内には終わりませんのでオーバーナイト化して判定してみました)

3.判定

1)陽性---阻止円なし
2)陰性---阻止円あり

うちでした結果は以下のようになりました。ちょっとディスクの回りに菌が発育してきているものもありますが、ピンセット汚染の可能性もあるのでご了解ください。

Carbapenem_inactivation_method_ci_2
解釈
カルバペネマーゼ産生菌では菌によりMEPMが分解されて抗菌活性が不活化してしまうので阻止円が無くなってしまい、非産生菌ではMEPMの抗菌活性が残ったままなので阻止円ができるということらしい。こんな簡単な現象を活用するとは何とも自分の頭の固さが滲み出てくる思いです。

報告では、腸内細菌科細菌では感度100%、特異度97%、ブドウ糖非発酵GNRでは感度97%、特異度98%と良好な結果が得られています。ブドウ糖非発酵GNRでは少し偽陽性と偽陰性が出てくる(PPV 96.3%、NPV 99.4%)ようなので、菌種同定と併せて考察することが必要になるようです。

MEPMのMIC≦0.25でカルバペネマーゼ産生菌でも検出できたとなっていますので、MICの結果に大きな影響を受けないこと、新しい型のカルバペネマーゼにも影響を受けないことが良いところでは無いでしょうか。CarbaNPとの比較もありますが、CarbaNP法ではOXA型カルバペネマーゼで偽陰性となっているのですが、このCIMでは陽性結果が得られているようです。

また、CIMは翌日判定のため耐性菌の検出まで時間がかかってしまうことがデメリットかもしれません。CarbaNPだと早くて1時間くらいで分かるので、日本ではMBLのCREが多いのでSMAを使ったりと導入のためのシェーマは考えないといけませんね。

CarbaNPについてはここを参照。
この報告ではCarbaNPについての違いについても書かれていますが、CarbaNPは色調変化が出てこない株があるとか、主観的に見るので見落としがあるとか、試薬調整が難しい意など問題点が取り上げられています。CIMはこれらの問題点を少なくして初心者でも分かりやすい方法であること、OXA型も検出ができる強みについて書かれています。

最終的には次世代シークエンスを使ってカルバペネマーゼを特定してみました的なことも書かれていました。まあ、表現形で耐性菌を検出するのは限界があるんでしょう。

上記の感度と特異度があれば十分検査室でも使えると思います。

耐性菌とのイタチごっこは抗生剤の開発だけでなく、耐性菌の検出にも及んでいます。
今年はG7でも耐性菌の話題が出てきますし、検査室も立ち止まっていてはは時代遅れになりそうですね。

Corynebacteriumの同定と感受性はどうしているのか?

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先日、ある研究会に参加させて頂きました。

備忘録的にそこでの内容について検査を担当しているものとしてコメントをさせて頂きましたのでコピペして紹介します。

「Corynebacteriumの同定と感受性ってどうしているのか?」ということをたまに聞く機会があります。恐らく医師の殆どは同定方法自体どのように行われているのか、知らないと思いますし、ブラックボックス化している部分もあります。

感染症かもしれない症例でも、コンタミネーション扱いになっていたり、検査室では発育しているのにも関わらず同定感受性も実施されておらず、GPR(Gram Positive Rod)のみで返されていることがあるかもしれません。恐ろしいです。

そう言っては何ですが、当院の方法などを含めて紹介をさせて貰います。

1. Corynebacteriumについて
Corynebacteriumは無芽胞のグラム陽性桿菌で、グラム染色所見では、棍棒様(club shape)に見えV字もしくはY字に確認されることが多いです。グラム染色所見では一見、S. pneumoniaeやEnterococcusのような楕円形の球菌と間違い易いのですが、連鎖状にならないことから鑑別が可能と言われています。上気道粘膜や皮膚に常在している菌のため、呼吸器材料や皮膚材料でも良く見られる菌の一つでは無いかと思います。
そのため、CV関連血流感染でたまに問題になることが当院でもありますので、血液培養からCorynebacteriumが出たらカテーテル感染を疑うようにコメントをしています。
脂質好性のCorynebacteriumというものがあり、乳腺炎で有名なC. kroppenstediiは通常の培養をしても発育が悪く見つかりません。Tween80という脂質を重層すると発育性が上がり検出しやすくなりますが、そこは乳腺外科と検査室がどの程度この感染症に関して相互理解があるかと思います。

また、Corynebacteriumの中にはC. diphthriaeがありますのでジフテリア症は感染症法でも届出疾患になっています。最近の症例報告ではCorynebacterium ulceransでジフテリア毒素を産生するものがあり報告があります。
この件については厚労省がQ&Aを作るほどの入れ込みです。
2. 同定について
同定は自動同定機器では殆ど対応が無理なため、従来法と呼ばれるマニュアル検査が中心になるか、ApiCoryneと呼ばれるシスメックス社の簡易同定キットを用いることが多いです。菌種を分類する場合、多くが文献や教科書を参考にしていきますが、英語文献が多いため英語が苦手な人の場合は同定が難しくなります。

私は個人的にこの文献を参考にしていたのですが、最近では菌種が増えてきたため対応できない場合もあります。http://cmr.asm.org/content/3/3/227.abstract

菌の形状では分け難い類縁菌があり、ArcanobacteriumやBrevibacterium、Rhodococcus,Propionibacteriumなどがあり、培地上のコロニー性状(色や臭い、発育速度など)を観察することが大切になります。経験している人は容易ですが、微生物検査の皆さんがそうではありません。

臨床微生物学会誌に総説を書かれていて、少しの菌種について紹介されています。http://www.jscm.org/journal/full/02203/022030207.pdf

最近では16s-rRNAやMALDI TOF-MSでの菌種同定する機会が増えてきましたが、菌種が異なりますが、菌の相同性が高く生化学性状を追加で確認しなければ同定が困難なことがあります。http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23104363

一度、Corynebacterium prooinquumの感染性心内膜炎が出た時に経験しました。最終的に生化学性状が鍵となり同定を行いました。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24486166

4感染性心内膜炎患者の血液培養から検出されたCorynebacterium

3. 感受性について
薬剤感受性の基準についてはCLSIとEUCASTともに判定基準を持っています。
CLSIについてはM45-Ed3に記載されていますが、私は個人的に内容を確認していないので詳細は内容を確認してください。下記はM24-A2のものです。
方法:ウマ溶血液添加ミューラーヒントン培地を用いて、好気で24-48時間培養をします。β-ラクタムに関しては24時間培養で一旦判定し、感受性であれば48時間まで培養延長します(発育が遅い菌なので)、最終は48時間で行います。
EUCASTは無料ですのでこちらから閲覧ください。
EUCASTではVCMのBPは2μg/mlに設定されています。これはStaphylococcusなどと変わりないですね。当院でもMICを測っていますが、通常、0.5-1μg/mlの株が多いです。
ある文献で血液培養のCorynebacteriumはコンタミネーションが殆どですということが出てきます。確かにその傾向はあるのですが、状況によりその判断が異なることがあると思います。CRBSIもそうですが、骨髄炎や感染性心内膜炎などの症例報告もあり、Corynebacterium=コンタミネーションというのが検査室で一人歩きしているのも見る機会があり、こういう研究会を通して情報提供を行うことは非常に良い機会と思います。
全国的に微量液体希釈法を用いてMIC測定をされているかどうか分かりませんが、多くが基準の無いディスク拡散法を行っている可能性はあります。個人的には同定に時間がかかりますので、重症ケアにはMICが必要と思っていますので、大凡の菌種とMICを見せて初期治療に対応することが多い菌種の一つかと思っています。
微量液体希釈法については自動機器のパネルがありますが、多くが低レンジの測定が出来ていませんので、当院では低レンジ測定可能なMICパネルを別途購入して常備しています。

各施設の事情は良く分かりませんが、低レンジのMICを測れるような感受性のみのパネルを常備しておくのも一つかもしれません。通常、培地を変えることで菌種対応も可能なので検討してみても良いかも知れません。中々検査室で自発的に購入希望を行ってもコストの問題もあり却下されるケースもあると聞きます。そのため医師の助言が非常に多きな後押しになることも多々ありますので今後もご協力をお願いします。

血管留置カテーテルの微生物検査について

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カテーテル関連血流感染の診断検査について話を良く伺うので、当院の方法も含め紹介がてらまとめてみました。少し長いですがご了承ください。

自分自身でも少し把握できていないところもあるので間違いなどあればご指摘ください。

1. カテーテル培養検査の目的
血管内留置カテーテルに関連した血流感染を疑う場合に提出することで原因微生物の特定ができることに加え、敗血症性血栓性静脈炎や感染性心内膜炎を含めた二次性に発生する感染症の管理をする。

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2. カテーテル関連血流感染の原因微生物
S. aureus、Enterococcus、Candida、緑膿菌、腸内細菌群およびコアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CNS)やCorynebacteriumといった皮膚常在菌を構成する微生物。特に、CNSやCorynebacteriumについてはカテーテルを抜去までは分からないことが多い。血液腫瘍内科の患者ではBacillusのカテーテル関連血流感染の報告もあり、まとめるとグラム陽性菌が主体で、非発酵グラム陰性桿菌や腸内細菌群が多く検出される。
原因微生物によって合併症のリスクおよび治療期間が変わりますので微生物の検出は非常に大切です。

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3. カテーテルの培養検査方法
定性検査、半定量検査と定量検査がある。定量検査は超音波法と超音波しない方法の2つがある。

(1) カテーテルの提出
① カテーテルからの逆血と末梢血を2セット採取する。
② 抜去するカテーテル刺入部をアルコール消毒し、カテーテルを抜く。
③ 抜いた後は環境汚染を防ぎ、滅菌されたハサミでカテーテル先端より2-3インチ(5cmほど)切り培養提出する。
④ 提出後に検査室は素早く検査を開始する。
⑤ これはダメな検査(rejection criteria):尿道留置カテーテル先端培養、生食への浸漬や輸送培地への接種したカテーテル、発熱や白血球増多等の炎症所見を認めない場合(俗に言う抜去記念培養)、VPシャントや髄腔内のカテーテル先端。

(2) カテーテルの培養検査
1) 定性検査
名前の通り、カテーテル先端をそのまま液体培地に漬けておく方法。カテーテル内部とカテーテル外部に付着している菌が増殖する。簡単な方法であり検査は容易であるが、菌の多い少ないに関係無く発育するのでコンタミネーションの区別が困難。

2) 半定量検査
①ロールプレート法(Makiの方法)
IDSAのガイドラインでも記載のある方法。カテーテル先端を寒天培地の上に転がし(4回転以上)、翌日以降発育したコロニー数をカウントして診断に用いる。しかしローリングする方法なので外壁に付着したものを中心に検出ができ、内腔の菌は発育しにくい。陽性率はさほど高くない(Makiの論文では10%しかない)。

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カットオフは15コロニーであるが、S. pyogenesやCandida、グラム陰性桿菌は15コロニー以下でも起炎菌の優位とみなし同定を行う。感受性に関しては検査室だけでコンタミネーションと判断は難しいので全てで行うのが望ましい。100コロニーまでは数え、それ以上は数えない。
培地は血液寒天培地(殆どの微生物が発育可能)を用い、必要に応じて(どういう場合なんでしょうかね?)マッコンキー培地(グラム陰性桿菌用の培地)も加える。通常5%炭酸ガス条件下で4日間培養を行う。マラセチアを疑う場合は血液寒天培地にオリーブオイル(脂質好性)を加えて発育促進させる。中枢神経まで挿入しているものは14日間培養しP. acnesのような弱毒菌も見逃さないようにする。

実際行われていない施設が多いが以外に簡単である。検査可能かどうか検査部と相談してください。カテーテルの提出方法を事前に詰めておかないと検査室が困る(長過ぎて検査ができないなど)起こり得るので必ず開始する場合は綿密な打ち合わせが欲しい。

②変法Makiの方法
①のMakiの方法を一部改良した方法。Makiの方法で内腔感染(閉塞)を検出しにくいのを改良した方法。ロールプレート実施後に生食に浸漬し、ボルテックスをかけて遠心する。沈渣に液体培地を加えて定性も行う。
当院はこの方法でしている。さらには沈渣の塗抹を見てグラム染色所見も返しています。

3) 定量法
① 量法(Cleri法)
カテーテル先端に2mlの液体培地を入れて遠心後(ボルテックス後?)の沈渣に新しく2-10mlの液体培地を入れる。その液体を100倍希釈し0.1mlを血液寒天培地に接種する。37℃(好気のみ)で培養し72時間後にコロニー数をカウントする。
10の3乗以上を優位な微生物として扱う。

②超音波法
結構手間がかかるが、超音波法は半定量法に比べて20%以上感度が上がるとの報告あり。
カテーテル先端に10mlの液体培地を注ぎ、55000Hzで1分間超音波を掛ける。その後15秒間ボルテックスを行い、そのうちの0.1mlを9.9mlの生食(100倍)に混和し、100μLを血液寒天培地に接種する。

・10の2乗以上でカテーテル感染を疑う
・10の4乗以上で発育多数とする。
・ルーメンが異なる場合はコロニー数の差が3.6倍以上あればそのルーメンが感染源になる。
定量法は感度は良いが、カットオフ値以下である場合は感染症が見過ごされる可能性がある。

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4) DTP(differential time to positivity)法
血液培養の時間差法。血液培養の陽性時間を基にカテーテル感染を診断する方法
カテーテルから採取した血液培養の方が、末梢血から採取した血液培養に比べ2時間以上早い場合に優位な結果になる。

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注意点として、血液培養採取時にどちらから採取したものか明確化する(ボトルに書くなど)、採血後は直ぐに培養機器に設置する、陽性時間が判定できるように培養機器や検査システム上で把握できるようにするのがポイント。

カテーテルの留置期間が長い場合は感度は高くなるが、特異度は下がるので診断時に留置期間を参考にした方が良い。

マルチルーメンの場合は全てのルーメンから血液培養を採取しなければカテーテル関連血流感染を見逃す可能性があるという報告もある。

見逃す割合はダブルルーメンでは27%、トリプルルーメンでは37%となり、結構血液の採取量が増えますよね。こういう場合は好気ボトルのみで良いように思いますが、ブドウ球菌の場合は嫌気ボトルの方が検出感度が高いという報告もあり悩みます。

4. まとめ(私個人の感想です)
結局のところ感度はDTPが良く、カテーテル先端培養は特異度が良いため、DTPに加えてカテーテル先端培養を行うのが良い。カテーテル先端培養は手間と判断基準も考えると半定量法でも良いと思うが、内腔感染を考えた場合は変法Maki法を採用する方が良さそう。沈渣はグラム染色も使えるので培養を待たなくても検出される微生物が大凡判断可能かもしれない。
PICCに関しても同じことが言えるかはまた調べます。
CVポートの場合はポート部の逆血を採取し沈渣をグラム染色で確認することも可能です。

カテーテル関連血流感染は非常に怖いので日常的に起こした場合には直ぐに対処できるように、最近では看護師さんの協力を得て、可視静脈炎スコア(Visual Infusion Phlebitis Score: VIP スコア)スコアを付けるようにしています。
VIPスコア:http://www.vipscore.net/…/upl…/2014/04/VIPscore-Japanese.pdf

参考文献
1. Mediterr J Hematol Infect Dis. 2012; 4(1): e2012004
2. Medicine (Baltimore). 2009 Sep;88(5):279-83.
3. Clinical Microbiology Procedure Manual 3rd edition
4. Ann Inten Med 2004.140,18-25
5. Clin Infect Dis 2010 15;50:1575-9
6. Clin Infect Dis. (2013)doi: 10.1093/cid/cit278

感染ラウンド 先日の疑義照会について

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平成28年度が始まりました。皆様の施設でも新人さんが配属となり気持ちもフレッシュになっていると思います。

さて、平成28年度診療報酬改定において感染防止対策加算の点数は変更がありませんでした。

1.感染防止対策加算1・・・400点
2.感染防止対策加算2・・・100点
3.感染防止対策地域連携加算・・・100点

感染防止対策加算の条件は下記の要件が1つ加わりました。これは加算1も2も同じです。

「感染制御チームは1週間に1回程度、定期的に院内を巡回し、院内感染事例の把握を行うとともに、院内感染防止対策の実務状況の把握・指導を行うこと。」
と記載があります。

そして、平成28年3月31日に疑義照会(その1)が出てきまして、その中に感染防止対策加算の要件についての照会がありました。

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院内巡回、つまりラウンドの要件についてですが、感染制御チームとして届出をしたメンバー全員を含めたメンバーでラウンドを実施しなければ算定できないということが明示されました。これは、院内感染は専門的な内容を色々な職種の特性を院内感染対策に活かすためには当たり前のことだと思います。

また、②にはこのような内容が書かれています。
「院内巡回は、毎回全ての部署を回らなければならないのか。」

解答は以下の通りです。

「必要性に応じて各部署を巡回すること。なお、少なくとも各病棟を毎回巡回するとともに、病棟以外の各部署についても巡回を行っていない月がないこと。」

つまり病床を有する場所は毎週ラウンドをすることが必要となり、それ以外の部署も最低月1回は漏れ無くラウンドすることが必要ということが明示されています。

既に実施されている施設は多いと思いますが、未だ対応できていない施設は今後の対応について検討する必要があると思います。

例えば、20病棟ある場合で1病棟の訪問時間が5分掛かる場合。

5分☓20病棟=100分+α(移動時間)

2時間弱のラウンド時間になります。

これが出来ていないことで実際に返納となった施設もあると聞きます。

ラウンドの方法も工夫が必要ですが、あくまでも犯人探しに来たという感覚では無く、安全対策、感染対策の一連の作業の中で来ましたという対応でラウンドすることが必要になるでしょう。

一つ検査の立場からお話しますが、全国の微生物検査室のうち1人で運用している施設が50%以上、5名以上在籍している施設が6%しかありません。微生物検査の担当になると、微生物検査業務は勿論のこと、週1回程度の感染情報レポートの作成(これは入院基本料の算定条件)、院内ラウンドなど非常に負担が多い状況が続いています。しかし殆どの施設では増員は行われずに対応されていると思います。

先日、薬剤耐性菌のアクションプラン(AMR)が関係閣僚会議資料として示されました。中でも院内感染対策の充実および、耐性菌サーベイランスの強化、検査体制の強化、抗生剤の適正使用についても書かれています。国策として耐性菌制御が示されているため、微生物検査室担当者の活躍の場が増えると思います。保険点数ばかりに限定された人員配置では無く、業務の複雑さや現在の医療環境に応じた微生物検査室の人員配置を適正に考えて貰えるようにして欲しいものです。

少し愚痴っぽくなりましたが、今が変革期にあることは間違いありません。乗り越えれるように皆さん協力をしていきましょう。

前述したAMRにはグラム染色を活用して不必要な処方を減らすこともできるので多いに活用を考えていきましょうと記載があります。グラム染色は初期治療に必要ですし、遺伝子検査が導入されてもグラム染色は大切な検査の一つになるのは間違えありません。
継続してグラム染色による感染症診療支援を続けていきましょう。
下記は慢性気道感染症患者に発生した肺炎球菌性肺炎です。(重症度にもよりますが)グラム染色により緑膿菌と思われる菌は定着菌と考えて、抗生剤の絞込みができる症例の一つではないでしょうか。

3喀痰☓1000

今後の予定

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微生物検査担当の皆様、GW真っ只中ですが出勤お疲れ様です。

微生物検査は主に急性感染症を対象にすることが多いため、予約検査なるものは存在しません。この結果で生命維持が困難になるという非常に緊急性の高い病態は少ないですが、連休なので微生物検査も連休対応ですという訳にもいきませんね。

私もずーっと休日出勤は絶えません。他部門の方から「連休なのに可愛そうですね。」と声を掛けて頂きましたが、微生物検査も臨床検査の一つを構成しているのですから、可愛そうも何も一体感の無いコメントを頂き少しテンションが下がりました。

さて、グラム染色ネタについて話をしていませんで申し訳ありません。実は今回もグラム染色ネタではありません。今後の予定です。

グラム染色に関連した講演依頼を頂きお話をする機会を頂きますが、予定について教えて欲しいと言われることがありますので、話せる範囲で掲載します。

2016年5月
・14日(土) 日臨技近畿支部医学検査学会 微生物シンポジウム
微生物検査の効率化と適正化 塗抹検査
・26日(木) 大阪府臨床検査技師会 微生物検査部門
ケーススタディで学ぶグラム染色の見方・考え方
・23日(土)秋田県臨床検査技師会 感染制御部門
ケーススタディー方式で学ぶグラム染色道場
秋田大学医学部医学系研究棟 14:00~17:00
・2日(金) 第65回日本医学検査学会
神戸国際会議場ほか
行列ができるスキルアップ研修会
・8日(土) 奈良県IC研究会 詳細未定

・16日(土) EBICセミナー神戸
グラム染色が役に立った症例の紹介
・29日(土) 奈良県臨床検査技師会 詳細未定

11月
・5~6日(土日) 日臨技中四国支部微生物研修会
開催場所:島根県 主に呼吸器感染について

・27日(日) 日臨技中四国支部医学検査学会 微生物シンポジウム
今年は他に学会などでお会いできれば良いなと思っています。

人見知りにつき無愛想な返事をすることがありますがご了承ください。


写真は喀痰グラム染色で確認された肺炎球菌のムコイドと非ムコイド株の比較です。
ムコイド株は、主に血清型3型が多く、中耳炎ではムコースズ中耳炎を起こします。まだペニシリン耐性が少ないのも大きな特徴です。
莢膜が分厚い分治療が難渋することがあるらしいです。ムコイド株をグラム染色や培養で確認できた場合はムコイド株とコメントを加えるのも良いでしょう。

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塗抹検査の効率化と適正化

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先日、技師会の地方会で「塗抹検査の効率化と適正化」について話をする機会を頂きました。

塗抹検査はある程度推定菌が外れるという考えで行う検査であり、それがそのまま診断には繋がらないものなので、今回のお題目は少し難しかったのですが、自分なりにまとめてみました。
塗抹検査を適正化を持ちつつ効率化を生むのは以下の場合である
・塗抹検査で菌種推定できる。
・推定菌により、感染臓器や微生物の特定、感受性結果が予測される。
また、
・そもそも感染症が否定的である(細菌感染が否定できるを含む)。
などがこれに該当する。
4塗抹検査の効率化と適正化の関係

具体的な例は以下の通りです。
・髄液で莢膜を持つグラム陽性双球菌が確認できる→肺炎球菌を強く疑う
・墨汁染色で莢膜を持つ酵母様真菌が確認できる→Cryptococcus
これは直ぐ様介入できる大事な検査結果ですので、効率化と適正化がほぼイコールの検査結果です。
共通ワードは莢膜です。莢膜のような菌体に特徴がある場合には効率化と適正化を同時に期待できます。また、迅速化が求められる髄膜炎例では、結果報告に時間がかかる微生物検査にとっては効率の良い検査になると思います。
これは一例ですが、適当に自分なりにこの状況でこの菌が見えたらこう推定するとグレード分類をしてみた。(仮)師範手前の分類とでも言いましょうか。結構評判が良かったです。
3決定打としたかったんですが。。(真似しちゃダメよ 笑)
やはり、塗抹検査に求められるのは迅速性であり、それが治療の適正化にどのように繋がるのか考えると、重症度が高い場合は効率の良い検査のを絞り込む必要があり、そのために検査を行うべきである。

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また、肺炎球菌のことばかり出しますが、肺炎球菌性肺炎の場合ですが、グラム染色所見は材料の品質評価が良いほど培養の検出感度が高くなります。当たり前のことです。
尿中抗原もありますが、感染症を起こしたタイミングにより検出感度は低いことがあります。グラム染色で多量の肺炎球菌が確認されるが、尿中抗原陰性という結果に遭遇したことがある人は多いはずです。尿中肺炎球菌抗原だけで肺炎の診断を終わろうとし
ているところがありますが、それでは大きく足元を掬われることがあります。
次に、肺炎球菌は自己融解を起こしますのでグラム染色で多量に確認されても培養で少ししか発育しないことがあります。付け加えると材料評価が悪ければ口腔内レンサ球菌に混じるため釣菌しが難しくもなるし、肺炎球菌性肺炎の場合は喀痰から肺炎球菌が見えたということを明示しておくことで、培養の検出感度も高くなります。こえが培養の適正化に繋がり、診断も適正化に繋がる効率の良い検査になります。
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やはり材料評価の良い検査材料は微生物検査の命と言って良いでしょう。
喀痰も洗浄して、膿性部分を適切に染めましょう。
下記は同じ喀痰を染めました。
7洗浄前(これじゃなかなか抗生剤を絞れません)
8洗浄後(これなら抗生剤を絞れます)
こういうことを重ねていくことで、薬剤耐性菌の発生頻度も減らすことが可能になりますし、無駄な抗生剤投与を減らす、無駄な医療費を削減するなど、あらゆる可能性が高くなります。
先日、ある会社の勉強会があり、「グラム染色は診断のための検査として良くないですよ。」とキッパリ言われてしまいました。あらそうですかって感じです。
確かに最新機器と比べるとそうでは無いと言われますが、そう言われないようにグラム染色による介入を増やし、アウトカムを良くする症例を増やすことは大切です。最新機器を用いても介入が曖昧だと、患者に対して良い医療とは言えませんし、曖昧な診断に対しても良い改善策と言えません。高い技術に頼り過ぎの検査はいつか技術に溺れることがあります。グラム染色だけでも良くないですし、しっかりと検査を評価して、あらゆる角度から感染症を考える必要があると感じました。
学会でお話をさせて頂きましたブログ愛好家の皆様、学会でお世話になった皆様、貴重な時間を頂きありがとうございました。グラム染色道場はまだまだ続きます。
更新が少し緩慢ですが今後ともよろしくお願いします。
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今、グラム染色が熱い理由

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5月26日、27日とG7伊勢志摩サミットがありました。

その中で、抗生物質は公共資源のため大切に使い、耐性菌の発生を防ぐ運動を展開しようと安倍総理が宣言をされてました。

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日本は2020年までに国内で使用される抗生物質を現在の使用量の3分の1減らすことを目標にしています。
薬剤耐性(AMR)アクションプランはここ→http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000120172.html
しかし、ただ減らすだけでなく、意味のある減らし方をしなければなりません。ウイルスは抗菌薬が効きませんので、ウイルス感染症を疑う場合は不要な抗菌薬処方を制限しなければなりません。
細菌感染症の場合は、重症度を見ながら抗菌薬の出番を見計らい、対象菌に適切な抗菌薬を絞り投与しなければなりません。AMRの中でも紹介がありましたが、グラム染色を使用した感染症診療を展開することで抗生剤の使用量を減らした医院の紹介があります。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/generalist/38/4/38_335/_article/-char/ja/

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先日より関西ローカルではありますが、夕方の報道番組でグラム染色の特番があり紹介されていました。http://www.mbs.jp/voice/special/archive/20160531/

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師範手前の提供した写真も紹介して頂きました。

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AMRにグラム染色は必要だとばい菌大好き医師から紹介して頂きました。今はなかなか手に入らない下敷きが写っています。
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今、AMRのアクションプランでグラム染色は必要です。
グラム染色愛好家の皆様の熱い気持ちを今こそ役立てる時です。あと4年後に良い成績が達成できるようにグラム染色を用いた感染症診療をもっと根付かせましょう。
今、グラム染色は熱いです。暑い夏にグラム染色如何ですか?





血液培養からブドウ球菌が出たら全てCEZ+VCMなのか?

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皆様、この1ヶ月間お休みしておりました。
更新が無いのでブログ愛好家が減ってしまいそうです。
皆様、今後とも宜しくお願いします。

今日は、先日研究会で報告させて頂いた内容について紹介します。

血液培養が陽性になり、グラム染色をするとグラム陽性球菌でクラスター形成が確認された。推定菌はStaphylococcusですが、気になるのがMRSAですよね。

Cvmrsa4☓1000(血液培養)

血液培養陽性時の処理は以下のような行程です。

血液培養陽性→サブカルチャー(寒天培地に分離)→18時間培養→コロニー形成→同定・感受性開始→18時間→結果判定

になります。既に血液培養陽性になるまでに18時間程度掛かるので、血液培養採取して結果が得られるまでは54時間程度かかります。

Mecapcr 

通常はグラム染色所見での介入、培養での中間報告、同定感受性検査結果報告時の3箇所で介入を行いますが、PCRを用いた場合は殆どの症例でグラム染色+mecAの結果の1箇所のみで介入が終了します。

じゃあ、最初からMRSAを想定して何でもかでもMEPM+VCMでカバーするのは理にかなっているかもしれませんが、なんだかしっくりいきませね。

だったら、血液培養陽性後直ぐにS. aureusかコアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CNS)かくらい分けれんもんかな?と思いますが、最近では質量分析機器を用いた菌種同定も病院検査室に導入が進んできて1時間程度で同定ができるようになりました。しかし、うちもその一つなのですが、かなりの高額機器なので導入できていないところが多いです。早く欲しい。

質量分析機器が無くても、グラム染色所見だけでS. aureusかCNSか分けることも可能な場合があります。

 ・バクテアラートを使用:感度89%、特異度98%(J Clin Pathol 2004;57:199–20)

 ・バックテックを使用:陽性予測値は 90%,陽性尤度比 11.4(感染症学雑誌 2008,82:656-657)

まあ、90%程度は判断ができそうです。

Cvmrsa2ちょっと赤いS. aureus(バクテアラートSA)

1赤くなく、少し大きめのCNS(バクテアラートSA)

しかし、S. aureusと分かっても肝心のMRSAかどうか分からないですよね。

S. aureusだし、コンタミネーションの可能性も少ないし、MRSA考えて一先ずはCEZ+VCMを使用してみようか?という風になりますかね。

通常、感受性をすると丸2日掛かりますが、早めに感受性結果が分からないものか?

→血液培養液を使って感受性を直接することも出来ますが、感受性をするにしても、そこから1日は掛かるので明日まではCEZ+VCMを入れることになります。感受性判明時にはCEZかVCMのどちらかが無駄になってしまいますが背に腹は代えられない状況です。

長くなりましたが、今回は、この状況でmecA(MRSAの耐性遺伝子)を調べて治療薬の選択を早期に検討を行えば、どの程度処方に影響が出てくるか、コスト面を中心に考えてみました。mecAと同時にS. aureusの判定も同時に可能なPCRを用いました。

PCRにかかる時間はたったの35分。血液培養のグラム染色をしてから1時間程度でMRSAかどうかの判定は可能です。

血液培養でS. aureusが検出された20例を対象としました。2例はコンタミネーションとなったので、最終的には18例となりました。MRSAは6例、MSSAは12例です。

・MRSA6例のうち5例はβラクタムが初期治療で使用されていた。

・MSSA12例のうち1例で抗MRSA薬を使用していた。

つまり、初期治療後から血液培養陽性後のPCR検査結果まで18例中の6例で不必要な抗生剤が投与されていたことになります。まあ、最初からMRSAが出ると思って、最初からVCMも投与すること無いので当然の結果と思います。

当院は血液培養を採取したら夜間・休日を問わず検査室に送り培養を開始しますので、血液培養採取から陽性までの平均時間は15時間です。そこから処方薬の検討が行われるまで少し時間がかかります(陽性確認から報告・介入までの平均時間は2時間)ので、その間に不適切な抗生剤にかかるコストはMRSA1例あたり2700円程度、MSSA1例あたり451円でした。初期治療でβ-ラクタムを処方する機会が多いのでMRSAの場合は全て不適切になってしまいますね。

そしてS. aureusと判明したのでCEZ+VCMに変更すると過程して

①同定・感受性が終わるまでCEZ+VCMを併用する

②その場でmecAを調べてCEZもしくはVCMのどちらか選択をする

この①と②を比較するとmecAを測定した方が37万円コストが下る(MRSAの場合は1人あたり4000円、MSSAの場合は1名当たり32000円のコスト削減)結果となりました。

13533138_1042372725843935_323498838当日ボツにしたスライドです。

mecAをすることで適切な抗生剤を早期に選択できることに加えて、余分な抗生剤処方を減らすことが図れました。

ちなみに追加でCNSも10例検討していたので、グラム染色を用いてのS. auresかCNSかの鑑別は感度99%、特異度100%となりました。S. aureusで1例でmiss readingがありました。個人的にはMALDI-TOF MSから頂いた、眼LDI-TOFということで高い検査技術の提供ができました。

PCRはCNSでも行っていますが、CNSと判明した時点でコンタミネーションの判断が早くできたので処方されずに経過観察で済んだ症例は半分以上ありました。ここでも余分な処方薬を減らすことができました。

結局、血液培養ではStaphylococcusが確認された場合は、グラム染色をしてS. aureusかどうかの菌種推定するのと、mecA遺伝子の測定をしてMRSAかどうかの確認をすることで十分に対応ができそうに感じました。菌種同定のみでは処方薬の変更は難しい局面も出てくるでしょうね。

しかし、質量分析機器を使うことで推定では無く、確定菌種を報告できることは大きなメリットであり、今は入っていませんが、もし導入が進めば検討してコストの計算をしていこうと思います。

さらに詳しい結果は、何らかの形で報告させて頂く予定です。

秋田にて

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7月23日の土曜日は秋田県臨床検査技師会でお話させて頂きました。

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人生初の秋田県でした。念願のスーパーこまちにも乗車できてテンションマックスで伺いました。

Photo念願のスーパーこまち(秋田駅)

さて、講演内容は秋田小町さんの要望もあり、初級者でも分かりやすい内容をお願いされていましたので、喀痰と尿のみ話をさせて頂きました。

とは言っても、毎回そうですが喀痰の話は1時間では終わりませんで、タイトな内容となってしまいました。

講演は2時間も時間を頂きまして、グラム染色の基礎(30%)+喀痰(50%)+尿(20%)という構成です。グラム染色の基礎では、染色時の注意事項、一般的な報告方法。喀痰と尿については検体を頂いてから鏡検が終わるまでのプロセスについてケースを交えながら話を進めていきました。

例えば、グラム染色だけでは重症かどうか、急ぐ症例かどうか分かりにくいことが多いのですが、色々な検体を処理しているうちで「あ、これ急ぐよね。」というのが混じってきます。あまり見かけない菌が見えた場合は当たり前は当たり前ですが、普段よく見ますが、ここの材料からは出てこないよなという症例もその一つです。
混濁した髄液が出てくれば誰でも急ぐことは分かりますよね。

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こういう症例は、帰る間際であったり、週末でバタバタしている時間に限ってきませんか?

今日、忘年会なんだよね~。だから結果は明日で良いかな?なんて思う人は居ないとおもいます。きっと採取した現場では何でも良いから早く結果が欲しいと思っているに違いありません。髄液穿刺は来院して直ぐ抜く場合もありますが、大方データが揃ったり診断が終わりの方に出てくることも多く、既に時間が経過していることもあり、結果は早く欲しいところです。うちでこれほど濁った髄液の場合は、最初に遠心せずに塗抹を作成し、後に沈渣の塗抹を塗ります。遠心せずに直接塗抹を作成して菌が見えたら早く診断に繋がるからです。

当日はノカルジア肺炎+膿胸とMRSAの腹腔内感染などについて説明していきました。

【ノカルジアはなぜ急ぐか】
検出が稀なので、遭遇する症例として稀になります。検査室で「おー、写真撮らなきゃ。」では無く、これは「非コモンなので、結果急ぎそう。」になります。検査室では何回か見ても、医師に取っては千載一遇です。また、菌の形が類似のActinomycesはペニシリンが第一選択ですが、ノカルジアはβ-ラクタマーゼ産生するのでペニシリン耐性になります。これこそ、キニオン染色が大きな影響力を持つことになります。

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【MRSAの腹腔内感染】
横隔膜下臓器では、腸内細菌科の感染が多くなります。また、手術や悪性腫瘍に関連した疾患の場合は緑膿菌などのブドウ糖非発酵菌のリスクが高くなります。つまり、菌が判明していない場合は緑膿菌と腸内細菌科を中心とした治療が先行することが多くなります。

グラム陽性球菌やCandidaについては最初から想定していないことが多いと思います。そこで、このようなグラム陽性球菌Cluster形成のある場合はどうでしょうか?やや小型のClusterで貪食多数であればS. aureusの可能性が高いと考えることができます。また、MRSAのキャリアであればMRSAの可能性は高まり、ブロードなβ-ラクタムであっても効果が無いかもしれないことが分かります。つまり、普段は遭遇するのですが、そこの部位から出にくい菌であれば、初期治療薬でカバーできていないことがあり、報告が早い方が良いのです。

【喀痰の解説】
喀痰の解説はいつも肺の解剖学的な内容と喀痰の成因をベースに塗抹像の解説をしていきます。いつも、菌の接着部位とそこから出てくる体液との関係、グラム染色像の特徴を整理して話します。

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また、患者の状態が悪い時に出てきた菌の臨床的意義はどう解釈するのか?貪食像は全て治療対象なのか?という内容に触れました。喀痰中のCandidaは貪食していても殆ど肺炎の原因とはならないという内容を取り上げました。

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また医師にはどういった内容を伝えると効果的なのか、メッセージ性の強い報告を端的に済ませるにはどういう内容で話すれば良いのか?など、普段、自分自身相談を沢山貰う中でまとめたことについて話を交えました。
4_2まだまだこれ以上にあると思います。

最後に、懇親会もして頂きました。

普段、悪いことばかりしている私に、なまはげは温かく迎えてくれました。
また、Kさんに教えて頂きました ババヘラアイス は美味しく頂きました。

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秋田の皆さんは本当に熱い方が多く、良い刺激を頂きました。
秋田の皆さんお世話になりました。

喀痰グラム染色はここまで分かることがある

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当院でグラム染色至急と言えば、喀痰と尿と関節液。

それぞれ採取してから30分以内を目処に報告をしています。

喀痰グラム染色所見は抗生剤の選択をする上で重要ですが、当院では病態も含めてコメントをすることがあります。

例えば、2週間ほど咳が止まらないという主訴で来院する患者ですが、痰切れが悪いということがわかり喀痰グラム染色のオーダーがあります。

「喀痰グラム染色所見を見て頂きたいのですが・・・」という依頼でやってきますが、所見として見る点は以下のとおりです。

①喀痰として適切に採取されているものかどうかの判断。
②①であれば多核白血球が多いかどうか。
③②の時には白血球の種類と量(どれが多いか)、核が明瞭か否か(不明瞭な場合は古いことを示します)。
④多核白血球優位の場合は微生物が居るかいないか確認する。微生物の確認があれば優位な微生物についてコメントをする。

例えば下記の場合はこのように言います。
「多核白血球が優位にあり、グラム陽性双球菌があり肺炎球菌を疑います。一部莢膜形成もありますので間違い無いと思います。貪食像は少なめですが見られます。」

→肺炎球菌性肺炎を示唆する所見としてコメントします。

4喀痰1000倍

オーソドックスですが、的確なコメント内容だと思います。
しかし、菌が見えない場合はどうしましょう?

咳や痰が出るので出す場合がありますが、下記の場合はどうしましょう?

23喀痰1000倍

このスメアから分かるのは、多核白血球は少ないが存在すること、フィブリン糸のような線状うの物質に絡みあうようにすりガラス状の粘液糸が確認される。上皮でも線毛上皮が多く見られ、マイコプラズマ肺炎のような異型肺炎を疑います。多くがマクロライドやテトラサイクリンの投与が検討されます。

CLINICAL MICROBIOLOGY REVIEWS, Oct. 2004, p. 697–728

この場合は粘液糸とフィブリン糸の交錯がポイントになります。
また、このようなスメアはどうしましょう?

今度は白血球はありますし、線毛上皮や粘液糸はありますが、フィブリン糸はありません。

これは気管支喘息の悪化に伴う像です。慢性炎症に出てくるマクロファージも見えます。少しマイコプラズマ肺炎とは異なる像です。

Photo_32_3 1000倍

また、気管支喘息の場合は肺実質に炎症所見が無いことがあり、胸部X線はキレイなことが多いと思いますので、マイコプラズマ肺炎じゃないと予想は付きます。こういう場合は抗生剤処方を一時見合わせて経過をみていくようです。

このようにグラム染色で病態把握をすることでより診断に近いものになります。

医学生も微生物検査室に行こう

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先日、定期的に参加している外部のカンファレンスで一つ提案を頂きました。


「医学生も微生物検査室に行って欲しいけど、中々説明が上手くいかず重要性について理解してくれない学生が多い。何を学習できるか教えて欲しい。」
医学生を経験していない私なので少しズレているかもしれませんが、息子の意見も参考に自分なりに考えてみた。

1.微生物の検出をするのは微生物検査室である
病原微生物の検出をすることは、感染症の原因微生物を特定することです。ここで言葉として出てくるのが臨床微生物学と感染症学の2つです。少し整理してみることにする。

①臨床微生物学とは
感染症の診断のために必要な検査とその治療方針の決定で、起因微生物を特定し、感受性検査を参考に治療方針を開発する学問。英語ではClinical Microbiologyである。

②感染症学とは
臨床微生物学とは画線を引いた、あくまでも病原微生物により引く起こされる患者の病態解析とその診断および治療法についての学問のこと。あまりキレイに書かれているものがありません。英語ではInfectious Diseaseである。

日本ではこの2つが同じような意味を持つように解釈される場面があるが、①は検査診断学で②は診断学なので意味が違う。

そのためか、感染症の診断=病原微生物の検出 という感覚で感染症診療に望んでいる若い医師を見る機会が多いが、病原微生物の検出は診察室や病室でしているのでは無く、検査室で行っていることを忘れて欲しくないと思っています。当院では研修医ローテーションで微生物検査室が選択できることもあり、実際ローテートで回ってきた研修医には感染症診断というより、臨床微生物学を中心に感染症診療について説明をする。

何度も言いますが、病原微生物の検出は診察室や病室でしているのでは無く、検査室で行っているため、医学生も微生物検査室に訪問して病原微生物に触れることで、微生物検出のためのプロセス、感受性検査の解釈、耐性菌など最新の情報について知ることができる。

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2.医学生の教育と実際の臨床現場のニーズ
日本の医学部教育は臓器別に行い、臓器横断的な内容に乏しい。そのため、臨床現場に直接参加できる体制づくりができていないため、学生自らが課題を持ち学生生活を送らなければ、初期研修医時には系統的な感染症診断を行うだけの力がついていることは無く、微生物検査室と疎遠であれば、ほぼ永久的に良質な感染症診療を行うことは無いのであろう。そのため臨床感染症を学ぶために感染症専門医の門戸を叩き、感染症診療の原則に基づいた修練を展開していく中で、微生物検査に触れる機会も多くなる。
やはり感染症学と臨床微生物学は切っても切れない存在だと思う。

参考文献)大曲貴夫:感染症診療における検査室の役割(モダンメディア)
3.プロセスを知ることができる分かる。
微生物検査は生化学や血液検査とは違い機械化が進んでいない。また微生物の増殖に影響を受けるため結果が日単位で進む。そのため今診断し、治療方針を決定する上で結果が出ていないことは大きな障害となる。

今分かることは材料から直接グラム染色をして主たる微生物を確認し、それに応じた抗生剤を絞り込むことが必要である。同定・感受性には3日ほど時間がかかるが、最終同定までにはある程度起炎菌は絞り込めることがある。例えば緑膿菌と腸内細菌(例えばKlebsiella)は同じ陰性桿菌であるが、形態も培地上のコロニー性状も全くことなるので、初期治療選択の翌日に緑膿菌に活性の無い抗生剤で開始していた場合は翌日修正できる。初期治療薬の絞込みや途中経過を知り選択した抗生剤の妥当性について検討することは患者の予後にも繋がる上に、広域抗菌薬の乱用を防ぐこともできる。

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4.効率を求めるアメリカとそうでない日本
アメリカの医療は効率を期待することが大きく、これは医療費が膨大になることを防ぐ理由の一つでもある。診療のみならず微生物検査についても同じで、材料の質が悪い検査は行わないことがある。また、グラム染色は臨床検査技師の特権であり、他職種は法的な理由がありすることが出来ない。

日本はどうか。そこまで効率を極める検査は行われていない。検査材料については来るものを拒まず行い、唾液から出たMRSAをVCMで治療するという行為は日常的に良くある。グラム染色は臨床検査技師のみならず、医師や初期研修医、薬剤師なども行うことができ、実際診療に活かしていることも見かける。

しかし、最近の日本の医療ではDPCの導入など効率化についても言及される場面も多くなってきている。そのため微生物検査の位置づけは重要である。

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グラム染色では抗生剤を絞ることなんて難しいでしょう?と未だに思っている学生も多いでしょうし、そもそもグラム染色を使い初期治療をより確実なものにできると教育を受けている2年生や3年生は殆どいないと思う。

学生でもグラム染色はできるが、技術習得には環境を自ら整える必要がある。染色操作や顕微鏡の観察方法などもそうであるが、学生の間に微生物検査室を訪問し、スキルを高めておくことは将来の診療に大きな財産となるに違いない。

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医学生の皆様へ、5年生と6年生で病院研修を行う時は微生物検査室も是非研修に行ってください。勉強がんばって。

菌の擬食化

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皆様、更新が遅くなりましてすいません。

別にサボっていた訳ではありませんが、ブログを書く時間が少し無かっただけです。
簡単な呟きであればFACEBOOK版がありますのでまた機会があれば見てください。
さて、今回はためになるかどうか分からない情報です。

https://www.facebook.com/GramStainGym/

菌の擬人化というものは沢山ありますが、今回はN大のN井先生のご要望もあり、なんと擬人化では無く、菌を擬食化してみました。如何ですか?この芸術作品は。

グラム染色像を相手に伝えるのは難しいですよね。


あ~あの形、こういう形といっても中々伝わらない。何か印象的な形象を伝えたい、そう思ったことはありませんか?

そういうお助けアイテムとして今回は代表的な染色像について食物に例えてみました。
まずはブドウ球菌。よく分離されるものとしてStaphylococcusとMicrococcusがありますが、経験上このような染色像に違いがあります。

何と言っても黄色ブドウ球菌は菌体外毒素やフィブリンの影響もあり菌や菌体周囲が赤く見えるのが特徴的ですね。

また、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CNS)は菌種によって大きさが少し違うのが特徴です。Micrococcusは2つもしくは4つのものが多く見え、菌はStaphylococcusと比べてやや大きめです。

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次に表現しにくいグラム陰性桿菌。N井先生のご要望でソーセージに例えて違いを検討してみました。

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やはり、E. coliやKlebsiellaなど腸内細菌群は直線状に見えることが特徴的ですが、緑膿菌はやや湾曲して見えることがあります。Acinetobacterは球菌状に見えることが多いですが、たまに陰性桿菌として見えます。Klebsiellaはアメリカンドッグのように菌周囲に莢膜があるのが特徴です。Klebsiellaの莢膜過剰産生菌の場合はやや大きめのアメリカンドッグでしょうか。ストリングテスト陽性なのはこの菌かどうかの鑑別の一つですね。

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ブドウ糖非発酵菌ではStenotrphomonas maltophiliaは緑膿菌と少し違い菌が集塊を作ることが少ないように思います。緑膿菌の大きな特徴はバイオフィルム。恐らくバイオフィルムはこのように水(βラクタム薬)を通すことがないのでしょうね。

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最後に防御機構ですが、貪食像はこんな感じでしょうか。美味しそう。

βラクタムはPBPに作用するので菌の中央部から形状変化(バルジ化、もしくはフィブロブラスト化)するのでこんな感じでしょうか。

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こうしてみると何となく身近に思えますね。
しかしバカですね(笑)。

たまにはリラックスして仕事しましょうね。

質量分析 ゲットだぜ!?

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更新が遅くなりすません。色々と忙しくて後回しになっています。

さて、この時期は次年度の予算要求を行っていく施設が多いと思います。やはり微生物検査室の目玉は「質量分析機器」ではないでしょうか。

オーバーナイトでしか菌種同定できなかったのに、数分で終わってしまうという、寝台特急でしか行けない場所をリニアモーターカーで行くような、まさに夢のような機械なので欲しいと思っている施設は多いと思います。質量分析機器については、販売メーカーさんのPRや各種学会、勉強会でも質量分析機器の有用性について話を聞く機会が多いと思いますが、有用なのは十分理解していると思います。

じゃ、購入してランニングすると患者に大きなメリットがあると思い、買ってやろうという人が現れるのを待つのですが、現実はそう甘くありません。なんせ「高い」。マンションが1件買えるほど。ランニングコストが大幅下がるのでという売り込みも無用と思われるほど高額です。そのため、市中病院の予算内で購入しようと思うとかなりハードルが高くなります。恐らく市中病院の機器購入のための予算は大学病院検査部の機器予算と同じくらいですしね。病院の建て替えや巨大な力が動かない限りそんなにポンポンと買うことはできないでしょうね。

質量分析機器をどのようにすると買ってくれるのか?少し考えたいと思います。

1.ランニングコストが下がることの魅力をアピールする

確かに異常なくらいコストダウンが図れるのは確かである。
同定キットやパネルを使うと1回分は2000円ほどかかるとして、質量分析機器では100円程度。単純計算で1900円/1菌種のコスト削減が可能です。

例えば、検査依頼が1ヶ月1000件、感受性率が30%として。1ヶ月57万円、年間684万円の削減になります。感受性を別途行うランニングコストが1000円として1ヶ月27万円、1年間324万円になります。年間324万円貯金して9年程度で完済できます。

しかし、ランニングコストが下がるとは言うが、そんな高い買い物は直ぐにできる訳ではありません。例えばプリウスは少し高いけどガソリン代が浮くから買いに行こうって言っても、見積もりを見ると、買えないよねってなりますよね。しかし、ランニングコストが下がるのはアピールポイントの一つです。

2_2プリウスも車体が安くなれば良いですけどね。

この場合に必要な知識としては、年間の件数や今後の見通し、物品の購入代金などを元々管理しておくと良いと思います。いつまでも物品担当部門に任せっ切りではいけません。

2.維持費の計算

・電気代は恐らく1件あたり30-50円。
・消耗品費は上記参照。ここに質量分析の試薬代と消耗品費が加わります。
・保守点検料は保守を結ぶかどうかで異なる。
 特に保守を結んだ場合のメリットと結んでない場合のデメリットはしっかりと記載する必要があります。

 保守を結んだ場合:安心して使える。保守の範囲内での故障が無料で受けれる。ただし保守範囲外の場合は有償。

 保守を結んでない場合:壊れなければラッキー。お金がかかりません。しかし壊れるとかなり高額な請求がかかります。技術料や出張料に加えて高額な部品代。まさに高い技術の裏には高い人件費と材料があります。
 
 日本に導入されて、まだ時間が経っていないので故障リストは殆どありません。故障しない機械に高額な保守費用を投じることになると言われかねません。この辺はメーカーとの交渉でしょう。

保守料が200万円とすると324万円から200万円引くので、残った貯金が124万円になります。

さらにレーザーを5000万ショット撃つと交換が必要です。窒素レーザーの交換費用はかなり高額ですが、窒素レーザー自体は簡単なものですので意外に安いようです。何が高いんでしょうかね。

3.アウトカムの計算

一番問題なのは、導入にあたり新規で保険点数が付かないこと。
通常、新規で購入する機器の場合は要求時に増収見込みがどの程度あるのかアピールタイムがありますが、これは全く期待できません。もともと、培養・同定で保険点数が付いており、同定まで進まなくても収入があります。そのため、同定のみで保険点数を計算して、収入について検討しようとしても無理が生じます。つまり使用頻度に応じた計算(前述)が必要になります。

1_2自動機器のランニングコストは意外に高い

なのでここでバックアップデータとして必要なのは入院期間の短縮や抗生剤の処方量削減、死亡率低下などなど。

下記の文献によると、

・入院期間は23.3±21.6日(導入前)→15.3±17.3日(導入後)
・30日後の死亡率(菌血症?)は21%(導入前)→8.9%(導入後)
・医療コストは7.8万ドル(導入前)→5.2万ドル(導入後)
と削減が可能だそうです。ただし外国のデータです。

では、日本のデータはどうか? 探した限りではありません。
導入したので、どうでしょうか?というデータは多いのですが、今後先駆者たちから出てくることを願います。

先駆者? そうです。当院には残念ながらありません。市中病院ですので、そんなお金は準備しようにも院内の優先順位はまだまだ上位機種ではありません。そりゃ、CTやMRI、内視鏡を新規で購入する方が利用頻度も高いし、増収見込みも上がるのでガチで戦っても勝ち目がありません。

先日、mecA遺伝子導入によるコスト削減を検討していますが、質量分析機器の大きなメリットはグラム陰性桿菌の種類が直ぐにわかることです。グラム陰性桿菌は菌種により自然耐性を持つので菌種同定が早くなるだけでもメリットは大きいと思います。
ただし、重症患者や発熱性好中球減少症患者においては既に耐性菌のことを考慮して抗生剤が選択されていることもあり、大きなアウトカムが変わることは無いと思います。
どちらにしても報告を早くすることに加えて介入をすることが大きなメリットとなるでしょう。

4.どうしたら買えるか?

関西人である私は私生活において根切り交渉をしてきましたが、この機器は値引きが見込めません。だったらどうしようか?

3関西人は全て値切る訳ではないそうです


個人的に宝くじが当たれば即購入ですがそうは行きませんね。

感染症に造詣のある医師を確保するのが良いかと思いますが、日本に感染症医は1500人程度。全ての病院には常駐していません。感染防止対策の一貫として周囲の方々に協力してもらいながら導入までこじつけるしかありません。なので、感染症に興味のある医師を捕まえて離さないことが良いでしょう。

感染症に興味のある医師を確保することが必要ですが、医学生のうち感染症に興味がある生徒は1クラスに1人程度。全員が嫌いな学年もあると思います。
しかしどうして興味を持たないんですかね?不思議ですね。

しかし、感染症は日常的に遭遇しやすい疾患の一つです。しかも生活習慣病と異なり、適切に治療することで治る。適切に治療するにあたり微生物検査のデータは不可欠で、それをいかに早く適切にどう治療に絡めるのか考えることが大切です。

上記のデータで菌血症の死亡率(導入前)が20%とあるが、厳しいことを言うが単純に高すぎると思います。20%というデータすら取っていないところは質量分析機器への道は更に険しいものになると思うので、しっかりとクリニカルインディケーターをラボでも取ってアピールすることが重要かと思います。微生物検査に携わっている方たちはそのエビデンスを作っているので、そこに貢献すべきでは無いかと思いますがどうでしょうか?

そういっていますが、ここ数年予算申請をしていますが、うちにも入るでしょうかね。予算要求の回答が出る頃はもう少し先です。果報は寝て待て。

コスト計算やアウトカムの検討をしっかりと行い、質量分析機器をゲットしていきましょう。
ようやくポケモンもLv23になりました。20を超えてからは中々レベルアップするのに苦慮しています。皆さんのポケモンはどうですか?Lv50になって、ポケスポットをくるくるすると質量分析機器をくれないでしょうかねえ(笑)。

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第26回神戸グラム染色カンファレンスのご案内

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神戸では毎年3回でグラム染色に特化したカンファレンスを開催しています。

グラム染色は迅速で安価で感染症診療には有用性が高いよっていう話をチラホラ聞くことができますが、実際結果をどのように報告するのか、グラム染色をどう読むのか、抗生剤選択時に何を注意するのかなど具体的な話がまとまらないことがあると思います。

このカンファレンスでは主に微生物検査技師だけでは無く、医師、研修医、学生、薬剤師と看護師が混じって結果についてどう考えていくかグループディスカッション方式で進めていく、コアな感染症の勉強会です。

ご興味のある方は参加して、そのリアルさを体感してください。

今回はどういう症例が飛び出てくるのでしょうかね。楽しみです。

まるでレアポケモンが出た時のように、毎回名物となったプレゼン用のパワーポイントに詰め寄る場面もあり。

Photo前回発表して頂いた兵庫県立こども病院の方々

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第26回グラム染色カンファレンスのご案内

今回下記の内容にて第26回グラム染色カンファレンスを開催予定です。

この会は日常的に感染症診療の一環で行われている『グラム染色』から得られる感染症情報を活用し、どの様に感染症診療へ切り込んでいくのか、医師・臨床検査技師、薬剤師、それぞれの立場から考え、活発なディスカッションを行うという新しいスタイルの会であります。お忙しいとは興味のある方は出席ください。

日 時 ; 平成28年10月27日(木) 18:50~
場 所 ; 三宮研修センター 5階 505号室
参加費 ; ¥500

司会;
兵庫県立尼崎総合医療センターER総合診療科 山本修平 先生
住友病院臨床検査技術科 幸福知己 先生

発表(予定)
① 「こりゃ~びっくりするくらいいるなぁ!」
担当:神戸大学医学部附属病院
   感染症内科 海老澤 馨 先生
   検査部 大沼 健一郎 先生

② 「70才、排液増量」
担当:西神戸医療センター
   臨床検査技術部 山本 剛 先生

http://www.f-road.co.jp/kenshu/

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この場をお借りして今後の予定

①2016年10月29日(土)

奈良県臨床検査技師会 14:00から17:00

場所;奈良県立医大

テーマ;グラム染色講習会 講義など

http://naraamt.or.jp/Kaiin/News/news201610.html

②2016年11月5、6日(土日)

日臨技中四国地区研修会 

場所;島根県立中央病院

テーマ:呼吸器材料グラム染色所見のポイント

https://www.jamt.or.jp/studysession/area/branch/chusikoku/


③2016年11月26日(日)

日臨技中四国支部学会

場所:高知市文化プラザかるぽーと他

http://www.e-g.co.jp/jamt49chushi/


④2016年12月23日(祝日)

ONCR 4th

場所;東京都のどこか

また告知します。

⑤2017年2月16日(木)

香川県臨床微生物研究会

場所;高松市のどこか

また告知します。

宜しければ足を運んでください。

ASPと微生物検査

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久々に投稿します。

今週末は日本感染症学会中日本・西日本、日本化学療法学会西日本の合同学会に参加をします。
シンポジウムでASPについて少し話する機会を頂きました。
AMRアクションプランの話題が絶えませんが、微生物検査技師の業務の中でASPについて何をするのか明確に記載がありません。

MALDI-TOF MSを使い菌の報告を早くすることは良いとは書いていますが推奨度が低い内容です。果たして早く結果報告をするのは推奨度が低い内容でしょうか?そういう内容について、検査室目線で触れようと思います。

また、報告書に書いている菌名と感受性だけでは抗菌薬の選択と投与期間の設定には不十分なことがあります。こういう莢膜過剰産生のKlebsiellaの場合はそういう可能性を秘めています。当院ではこういう菌を見つけた場合は莢膜過剰産生菌(疑)としてコメントを付記し、必要に応じてmagAなどの検索をしています。

日本は米国と医療体制は異なります。
日本には 現場と抗生剤、そして検査室の3点が日本の感染症診療には必要と思います。

http://www.okinawa-congre.co.jp/wm-jcid2016/

2_2血液培養液のグラム染色像

2_3喀痰グラム染色像

KlebネバネバKlebsiella 勿論ストリングテスト陽性

Escherichia albertiiはどうしましょうかね

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Escherichia albertiiに係る報告についてという事務連絡が厚労省からきておりますが。病院検査室でどうすれば良いの考えないといけませんね。

http://www.toyama.med.or.jp/…/uplo…/2016/11/2016chi3_178.pdf

E_arb1

Escherichia albertiiについて未だ知らない人はここを読んでください。
IASR2012年 5月号 http://www.nih.go.jp/…/ja/ecol…/ecoli-iasrd/2030-kj3872.html
最初の報告例 バングラディシュ人の下痢便から出た報告ですhttps://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12807204

ってか、どうすんねんって思う。うちではvero毒素をPCRでしているので引っかかるかもしれないけれど。殆どの病院検査室では対応が無理でしょうね。もう少し実情にあった事務連絡が欲しいと思います。

理由は以下の通り

1)eae陽性、非運動性、乳糖非発酵、硫化水素非産生
→eae遺伝子はハッキリいって無理。運動性と乳糖分解性、硫化水素の産生性についてはTSIとSIMでも鑑別可能。 ここは分けて欲しい。

eae遺伝子については下記の文献があります。

熊本の磯崎先生がまとめています。
http://www.jscm.org/journal/full/02601/026010024.pdf

大阪公衛研の小林先生がまとめています。
http://journal.kansensho.or.jp/Disp?pdf=0760110911.pdf

2)stx2f産生
→無理でしょうね。そもそもイムノクロマトグラフィー法による検出はできないVT2のvariantですからね。stx2fは血便も出ないし、下痢のみの症状が多いものですので、通常のstx2と同じにしてもらっては困る。

http://www.pref.fukuoka.lg.jp/…/l…/212496_51821171_misc.pdf…'

3)Shigella boydii血清型13
→そもそもS. boydiiがでてきたら、異常でしょうね。Shigellaの中でも検出頻度が非常に低いし、S. sonneiのように国内感染事例はそうそうありませんからね。渡航歴をしっかり聞くのが大事ですね。
しかし、同定機器も質量分析も赤痢菌と大腸菌の区別が困難なので注意も必要でしょうね。
http://www.nih.go.jp/niid/images/lab-manual/shigella.pdf…'


4)Hafnia alveiって何か?
→ラボでもたまに見かけるやつですね。下痢を起こす菌を今回対象にしているのですが、H. alvei疑いのものを検出するプロセスは無いですね。便から出たGNR全てを同定すると検査室はパンクしますね。コロニーは少し毛羽立っているので大腸菌とは違うな?って勘は働きそうですね。肺炎、UTIや腹腔内感染や血液培養陽性で見るのが多いので下痢をどこまで拾うかは非現実的ですね。


Hafniaalvei_001_f21_gal_ba_488_f800下記URLより拝借
http://microbe-canvas.com/Bacteria/gram-negative-rods/facultative-anaerobic-3/catalase-positive-3/oxidase-negative/colistin-susceptible-1/hafnia-alvei.html


http://cid.oxfordjournals.org/content/22/6/1040.full.pdf…'

といいつつ要チェックしておかないと病院検査室の設置している意味が薄れますね。

中四国学会終わりました

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先日、平成28年度日臨技中四国支部学会でお話する機会を頂きました。

高知は1年ぶり。前回は院内感染対策の話をさせて頂いたので、グラム染色の話をするのは久しぶりです。また、中四国支部では先月の始めに研修会をしたこともあり、グラム染色の話は沢山させて頂きました。
今回はダイジェストで中四国支部学会の内容をご紹介します。
古くて新しい検査として注目度の高いグラム染色は不適切な抗菌薬使用を出来る限り少なくしようという人は欠かすことのできない検査と思います。もうグラム染色無しでは怖くて抗菌薬を選べないという人も多いと思います。しかし、グラム染色なんて感度が鈍いし、感受性はわからないし、そもそも菌種推定なんかできやしないしと考えている人もあるかもしれませんが、髄膜炎の場合は感度がどうあればグラム染色所見は重宝する検査の一つです。


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このブログを始めたころは菌種推定なんかは危険だからしない方が良いという人も居ましたが、今はそういう時代ではありません。数々の迅速検査が出てきましたが、まだピンポイントに抗原が当たらないと検出できないものが多いのですが、グラム染色はそうではありません。抗原、つまり菌種が複数でも一度に確認ができるので、混合感染の場合は有用なことがあります。

また、白血球や滲出液の確認を通じて病態との繋ぎ合わせも出来るので、出てきた菌の臨床的意義について考えることができるのです。
一般的に細菌検査報告書は文字や数値の羅列が多く、書いていることを深読みしない限り内容が十分把握できません。いわば、「萌えない」のである。
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前述したようにグラム染色所見は菌と白血球、滲出液、細胞を通じてスライドガラス表面で病態を表現しいるので、顕微鏡越しに患者さんと会話をすることができます。これが「萌える」検査です。萌える報告書は内容を詳しく書いた方が良いですが、今の検査システムのインフラの影響も大きくそういうスペースは全くないのが現状です。なのでカルテに書くしかありません。カルテに書く場合は複数人が閲覧することもあり恥ずかしい文章は書けないし、皆が分かるような内容で無いといけません。報告書の例は以下の通りですが、書かなくても医師からグラム染色所見の問い合わせを貰った場合には少し病態と合わせて丁寧に話をすることが必要です。

1染色所見
3喀痰で肺炎球菌が確認された場合の報告例

肺炎の場合は胸部X線を撮影し診療情報としますが、部位の特定はできるが菌種の推定は困難です。また、グラム染色は菌種推定はできますが、部位の特定は困難です。要は胸部X線所見とグラム染色所見の融合を図れば良いのですが、微生物検査技師には胸部X線所見の読影は困難なことがあります。では、病態との繋ぎ合わせができないのか? ではなく、繋げてあげれば良いわけです。

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例えば、肺炎の起炎菌は感染する細胞が異なります。そのため大葉性肺炎や気管支肺炎といった肺炎のパターンが異なります。大葉性肺炎は肺胞腔内に感染を起こし細胞の障害度が強く、フィブリンが多量に産生します。そのため、喀痰グラム染色所見は赤みが強いものが増えます。赤みが強い場合は組織の障害度との関連性があり、大葉性肺炎以外でも組織破壊が強い壊死性肺炎(黄色ブドウ球菌の気管支肺炎に続発します)、緑膿菌肺炎、肺結核、肺真菌症なども同様の赤みが見えますので、見えるだろう菌種を予め想定しながら見ていくことができます。肺真菌症や肺結核では菌があまり見えませんので、主に赤い場合は肺炎球菌か黄色ブドウ球菌、緑膿菌を中心に見ていくことになります。緑膿菌については市中肺炎は少ないので患者背景を絞り込むことで更に絞り込むことが可能です。

一方、気管支は分厚い臓器なのでそうそう組織障害はなく、ムコ多糖類と白血球中心の喀痰となるので膿性痰の割にはグラム染色所見の背景は桃色でスリガラス状に見えてくることが多いです。この場合はインフルエンザ菌を探します。マイコプラズマ肺炎も気管支肺炎ですが、菌は染まらないので確認は出来ません。逆に言えば菌が見えない気管支肺炎はマイコプラズマ肺炎を疑えるのかもしれません。
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出来ないのであれば可能にする。診断に近い有用な情報提供を心掛ける。
特に、グラム染色所見の解釈は難解です。毎日見ている検査室はその解釈を診断に繋げる必要があります。
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今後、微生物検査も自動化が進みますので時間に余裕ができると思います。
グラム染色の鏡検時間を多くしていきプライマリーケアの充実に寄与したいところですね。
時代を切り開いてくれたこの方々のようにこれから考えていきたいです。

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